情報コード  Dz3
情報登録日  2019/03/14
情報作成者  河井正治

Ⅰ.各種のスポーツに共通する科学 その3(振り回し旋回技術)

・・・・振り回し旋回:武器ヌンチャクに学ぶ・・・・

1.振り回し動作
 多くの球技スポーツでは振り回す技術が極めて重要である。球技スポーツはボールを使う。そのボールを早く移動させることが重要であることが多い。ボールを移動させる手段は「投げる」、「打つ」、「蹴る」などの動作である。投げるためには腕を「振り回す」。打つためには、野球ならバットを、テニスならラケットを、ゴルフならクラブを、バレースパイクなら腕を「振り回す」。サッカーなど蹴るためには足を「振り回す」。と言う風に「振り回す」動作は頻繁に使われる重要な基本動作である。その「振り回す」動作の結果の球速度が勝負を決める重要要素となることが多い。
 野球ピッチングのトップ選手は160㎞/時以上の球速を誇る。テニスのラオリッチ選手のサーブ球速は210㎞/時を越えるそうである。プロ野球のホームラン打球の速度は160㎞/時が平均なのだそうである。これらはいずれもその世界では並外れた高速度なのである。このような高速度を生むにはただ単純に腕やラケットやバットを振り回しているのではない。高度な振り回しテクニックが存在するのである。
 「振り回す」技術はスポーツの種目によって実現するパターンが違うが、その最も重要な基本技術がヌンチャク「振り回し」テクニックである。ヌンチャクはよくアジア系の暴力団員などが振り回している武器である。この武器の相手に与えるダメージを大きくする振り回し技が球速を高める重要な技術である。

2.実際の振り回し状況をテニスサーブのケースでみる。
 テニスサーブは選手の上部に放り上げたボールをラケットで強力に打つことで行われる。
 図1は、豪速球サーブで有名なラオリッチ選手のサーブ動作の連続画像である 

            図1.ラオリッチ選手のサーブ映像

 ビデオの映像からの連続画像なので、1秒間に30コマ、1コマ0.0333秒の間隔である。画像のラケットの旋回はビデオのコマ数より早くてよくわからないかもしれない。右から2つ目の⑤画像がインパクト瞬間である。下段は身体各部の関節を結んだスティック図である。この図をみると選手の一連の動作の状況が写真よりよくわかると思う。ラケットの位置を赤線で示した。
 打撃による加速なので、ボールはラケットとのインパクト後にはもう加速が行われない。打球速度はインパクト瞬間のラケットの移動速度で決まる。速く移動すればそれだけ打球速度が速い。あたり前である。最終速度はインパクト瞬間とその1コマ前のラケットの旋回量で計測できる。インパクト瞬間とその1つ前の、2コマ分のラケットの旋回量が重要となる。インパクトの瞬間は図1の⑤の画像である。図2はわかりやすいように③④⑤の画像を取りだして見たものである。

             図2.インパクト瞬間ラケットの旋回状況

           
 ラオリッチ選手のサーブではインパクト直前にはラケットが180°近くも大きく旋回している。僅か0.033秒間である。5400°/秒もの驚異的旋回角速度である。これが彼の210㎞/時以上の高速サーブ打球の源になっているのである。

           図3.関東学連T大学W選手のサーブ画像



 図3は、ある学生選手のサーブインパクト瞬間の画像で、④から⑤のラケット旋回は極めて少ないのがわかる。これでは高速サーブ打球は打てない。ここに世界トップとの差に大きな秘密がある。

3.テニスサーブのラケット振り回し
 手の振り回しでラケット移動を加速させるには、上腕の旋回と腕の旋回、手首を中心としたラケットの旋回の3つの動作が合成されて行われる。
 旋回の速度を速くするということは、回転を大きく速く行うことである。速く行うのは訓練で筋力をつけることでできる。大きく旋回するということは、可動範囲が大きい回転を目一杯行うことで対応する。ここで重要なのは、可動範囲という概念である。人間の身体構造上旋回の可動範囲が制限を受けてしまう。

               図4.手首、上腕、腕の可動範囲


 図4に示したように、ラケット振り回しの旋回の可動範囲について考えると、手首はせいぜい90°しかないことになる。上腕は旋回の全可動範囲は大きいのだが、前に打球を打つのは上腕を精一杯後ろに引いたところからインパクトの時の真上までせいぜい60°位しかとれない。右側の図のように腕の旋回は、肘を中心にして180°以上の可動範囲を取ることができる。強力なサーブを打つ場合この可動範囲をフルに全力で使うことになる。大きく可動範囲を取れる腕の旋回が最も重要となる。もちろん上腕の旋回は、振り回しの根幹土台をとなるので重要であるが旋回可動範囲が小さく、高速度を得るには十分でない。手首については、持たれているラケットを強く動かすことができるので、ある程度の効果を生む。野球のピッチングでも160km/時を越える速度で球を投げるピッチャーは手首のスナップを効かせることが常識である。初歩的な段階では、どうしても上腕の旋回と手首の旋回(スナップ)が中心に考えられて、手首や腕の旋回はあまり考えられていないようである。
 図4の右側の腕の可動範囲の図をみると、腕の可動範囲を大きくするには、打球直前に肘を高くする(ハイエルボウ)必要がある。図2の③④のラオリッチ選手の画像では(インパクト2コマ前)肘が手のどこよりもの高くなっている。ちなみに、図3のW選手の③④ではそうでない。この差に大きな秘密がある。

4.武器ヌンチャク
 例は悪いが、ヌンチャクという武器がある。アジア系の暴力団などが振り回している武器である。図4に、武器としての破壊力を示した。ヌンチャクは3~50cm程の金属製のバーを蝶番で繋いだものである。敵を壊滅的に破壊するため、握りバーを持って振り下ろして、攻撃バーを激突させるように使う。握りリバーをもって振り下ろすと、手を振っている最中は攻撃バーが握りバーに引きつられた状態で飛ぶように進む。振りの最終段階で握りバーは止まりかり、攻撃バーそのままの勢いで自身が急速旋回して相手に衝突する。攻撃バーは振り下ろしの速度に加えて、急旋回の大きな加速を受けて衝撃力を増して強力に激突する。単独バーでの打撃より旋回加速が加わって大きな衝撃力となる。強い攻撃破壊力が得られるのでその方面の方々には愛用されている優れた武器なのである(よくない例で申し訳ない・・反省・・))。握りバーの最終段階で持つ手を逆に上に上げるか手前に引くとさらに攻撃バーの旋回が速くなり激突力が増す。ヌンチャクの破壊力増大のブラックテクニックである。

           図4.武器ヌンチャクとその破壊力


       
5.テニスサーブのラケット振り回しはヌンチャク打法
 図5は、そのヌンチャクと同じ原理でサーブの腕回転が実行されることを示したものである。


          図5.腕の旋回をヌンチャク型に

    
 ヌンチャクは、振り下ろしの最終段階の手の動きの減速で、攻撃バーが旋回を始めると、短時間旋回になるので、旋回による加速力が増大する。腕からラケットの先までがヌンチャクの攻撃バーとなる。ピンク色で示した。サーブのインパクト時にも、同様の原理で腕の旋回が短時間に行われれ打撃が強くなり極めて効果的になる。W選手のようにヌンチャク技術がない場合は効率がよくない。腕旋回を短時間で行うには、図2の③④のラオリッチ選手のように肘をたかくした姿勢(ハイエルボウ)を保って、インパクト直前まで腕の旋回を我慢することが大切である。
 さらにヌンチャク効果を大きくするためには、インパクト瞬間で肘を下げて(肘を上腕で下方に引っ張るように)旋回速度を上げる工夫も必要である。実現するには、タイミングや動作そのものが大きく異なるので、繰り返し訓練で習熟するように努力することが大切である
 ヌンチャク技術を活用したこの高速ラケット振り回し技術が、投げたり打ったり(ピッチング、バッティング、サーブ、スパイク、シュート、ゴルフ打撃、等など)の多くのスポーツの手や打撃用具などの振り回しの最も重要な基幹技術なのである。

7.錦織選手のプアーなサーブ技術
 図7は錦織選手のサーブ連続映像である。映像は、ネットの錦織選手練習風景のビデオ映像からとった。錦織選手もハイエルボウ姿勢から打つ動作に入っている。しかし、それはインパクトの0.1秒(4コマ)も前である。右から1コマ目を見ると腕の旋回はインパクトの1コマ前に腕の旋回は終わってしまっている。しかも振り回しには2コマかかっている。勢いは半分である。それから後のラケット旋回は手首だけで行われている。手首返しだけのラケット旋回打法。これでは、200㎞/時を越すようなサーブはできないのである。

             図19.錦織選手のサーブ連続映像


 T大学のW選手と同様にラケット旋回技術を研究していないようである。かれもそのコーチングスタッフもテニスの戦いに対し技術を戦略的に考えていないようである。サービスエイスは、サーブを打つだけでポイントが取れる。そのあとはラリーの応酬はない。サービスエイスは体力的には球を打つだけなので、相手の球を追って走り回る運動に比べて格段にエネルギー消費が少ない。テニスの試合時間は何時間にも及ぶことが多い。4~5時間もかかることもある。最終的には体力勝負になる要素も多い。サービスエイスは極めてポイントを取るための重要な省エネ武器である。さらにサーブを打つ場合、相手の到達許容範囲ギリギリを攻めることができれば、例えサービスエイスにならなくとも、相手は限界近くまで走って体力を消費させることになる。長丁場の試合ではサーブ技術の上手・下手の差が勝負を決めると言っていいほどである。「サービスエイスを狙う」ことが最重要な戦略なのである。
 ラオリッチ選手のサービスエイス率は20%近くもあるという。サービスエイスの少ない錦織選手に比べて走り回る体力消耗は20%近くも少ないということになる。もともと体力的に劣ると言われている錦織選手。どうして高速サーブの練習に励まないのだろうか。

6.ヌンチャク技術は今や球技スポーツでは常識!
 打球直前に肘を高くする(ハイエルボウ)ことはあらゆる球技スポーツでは打球速度を高めるためのテクニックとしてフルに活用されている。図2の、実際にラオリッチ選手の映像では(インパクト2コマ前)肘が手のどこよりもの高くなっている。ちなみにプロ野球選手のピッチング例をみてみよう。図6は、2018年度日本シリーズ選手第1戦のH球団の先発S選手の投球の連続画像である。この時スコアボード表示では球速が152km/時であった。画像は球の手離れ瞬間を⑤とし、その2コマ前からである。リリース直前のコマ④の画像ではやはり肘は高いポジションになっている。
       
            図6.プロ野球S選手の選手の投球



7.球技スポーツの振り回し技術の最重要ポイント・・ヌンチャク振り回し技術!
 テニスのサーブは、相手に関係なく自由に打ち込めるので、非常に重要な武器である。サービスエイスが取れると相手と戦うことなしにポイントを取れる。サーブを相手が上手に受けると、そのあと相手の球を必死で走って受け打ち返すというラリーを繰り返し、相手のミスを誘ってポイントにするには大変な重労働をしなくてはならない。そういった意味でテニスではサーブ技術が最も重要であることになる。それにはもちろんヌンチャク打法が使われている。
 野球のピッチングも打撃も正にヌンチャク振りが最重要技術である。トップ選手は必ず使っている。
 球技スポーツでの振り回し技術は、バレーボール競技のサーブやスパイク、サッカーのシュート、等など,非常に多くの局面がある。その全てでヌンチャク振り回し技術が活用されている。もしかしたら柔道の二枚腰というのもヌンチャク技術かも知れない。
 ヌンチャクは武器として使うのはいいことではない。しかし、その振り回し技術はスポーツにとって重要な技術なのである。スポーツ各種目での詳細な技術展開内容は、その種目の解説の場で行う。ご参照いただきたい。
 もちろんスポーツの場での必要な局面でヌンチャク振り回し技術を無意識に使えるように訓練ルートを養成するのが重要である。ぜひ強い選手を目指してみよう。