情報コード  DTD1
情報登録日  2019/07/22
情報作成者  河井正治

4.テニス 2.守備 その1 守備の基礎知識

・・・・サーブのを受ける・・・・

1.サーブの豪速球をかわす
 テニスの守備とは、相手の打った球を相手のエリアへ打ち返すことである。特に相手サーブの場合は強烈な球が来るので大変である。テニスサーブの打球速の世界トップ水準は、男子選手の場合230km/時を超える高速と言われている。いかに速いサーブを打つかは動作のテクニックで決まる。世界のトップ選手はまずサービスエイスを狙う。サービスエイスは極めて効率よく得点を上げるという素晴らしい武器なのであるから。
 そこで、受ける側はいかにサービスエイスを阻止するかが戦いの重要なポイントとなる。しかし、200km/時を越える剛速球サーブでは打球が人間の「急発的動作開始」能力を越える速さで到来してしまう。
 テニス守備はとりあえずサーブ受けの守備を考えてみる。「急発的動作開始」の詳細に関してはスポーツ共通「急発的動作開始」の項を参照いただきたい。

2.サーブの攻撃性を考える
 テニス競技で開始最初の攻撃がサーブである。相手に翻弄されることなく、自分の得意な姿勢や動作で球を打つことができる。最大の重要な武器である。その攻撃性について考えてみる。

        図1.テニスコートとサーブの攻撃性     図2.受け側選手の守備
  
 図1は、サーブの攻撃性について考えたものである。右の選手がサーブを打って競技が始まる。その打球速が200km/時の場合、コートの長さが23.77mなので0.43秒で相手に到達してしまう。ルールとしてサービスエリアに必ずワンバウンドさせなくてはならないのでその瞬間ボールの速度が落ちてしまう。それを加味すると所要時間が0.1秒ほど長くなると想定される。それでも0.51秒後には球が来てしまう。
 図2は、それを受ける選手の動きである。相手のサーブの来る範囲で球をちゃんと打ち返さなければならない。それが守備必要範囲である。受け手の選手にとって到達移動範囲がこれをカバーしていれば打ち返せるので、なんとか相手のサービスエイスは避けられる。サービスエリアの半分が4.175mなので、コートの寸法から考えて守備必要範囲は5m位と設定する。

3.サーブ受けの構えからの「急発的動作開始」
  スポーツ共通の項で解説した内容をテニスに置き換えて表示したのが図3である。
 人間は、相手打撃の球受けなど「急発進的動作開始」状況では、目や音での開始瞬間から身体が動き始めるまで約0.2秒かかる。移動が始まって捕球位置への移動速度が確保されるまでに(隠れ反動時間のため)さらに0.3秒を要する。合計で0.5秒である。このあと球の到達位置への球追い移動が行われる。移動速度確保の動作時の0.3秒間は身体移動のための加速局面である。この0.3秒間の移動距離は若干なので煩雑になるため考慮しないで話を進める。移動速度確保と同時並行的に0.2秒間に捕球体制が作られるので、0.5秒度に急速移動で必要守備位置に到達した以降(捕球体制ができている)に球が来る場合は余裕を持って動作する(守備する)ことができる。これを余裕時間と呼ぶ。これらの数値はかっての野球内野守備計測での経験値である。テニスのサーブ守備でもほぼ同等の人間の動作であろうと推察して描いた。
 


               図3.捕球動作の時間的経過

 テニスサーブ捕球でともかく球まで到達できれば、守備ができサービスエイスを避けることができる。つまり、受け手の守備は守備位置までに何秒で到達できるかが極めて重要な要素なのである。

4.球追い速度
 陸上競技の男子100m競争の世界記録は9秒そこそこである。日本記録はやっと10秒0を切ったところである。100mが10秒ということは、移動速度は10m/秒となり、0.1秒間に1m進むことになる。実際に高校野球の内野守備のデータでは、ケースによって大きく違うが、守備球追いでは平均的に0.1秒間に約0.8m位の移動が行われていることが計測されている。当初、テニス守備では移動距離が小さいので訓練されたトップ選手は0.1秒間に1m程度は進むものと考えていいのではないかと推察した。しかし、日本トップのN選手の実際のサーブ受けでの移動速度は、やはり野球なみでせいぜい8m/秒くらいしかなかった。市民選手や経験の浅い選手などは相手打球の来る球位置への移動速度はそんなに速くはなく、その7割の5.5m/秒位と考えて解析することにした。1秒間で8mの移動速度は100mが12.5秒となる。当然、相手打球速度に対する移動速度の違いによって守備可能範囲も大きく違ってくる。サービスエイスの確率も大きく変わってくる。

5.手伸ばし守備範囲
 図4のように、その場で移動しない場合の守備範囲は、守備選手の利き手側フォアハンド側が1.35mバックハンド側も1.35mと仮定する。左右両方向で2,7mとなる。この寸法は選手の体格・姿勢・身体のこなしなどで大きく変わるが、筆者自身(身長170cm)の寸法を計測して参考値として使った。この範囲は選手が移動しなくても相手打球をフォローできると考えられる。ただし、図3に見られるように捕球体制確保のための時間が相手打撃瞬間から0.4秒(動作開始から0.2秒)はかかるため、その前に球が来てしまったら捕球できないことになる。逆に200㎞/時の高速サーブでも、守備のために移動しなくて済むところへ球が来れば、体制確保ができていれば0.13秒の余裕が生じて、しっかり打ち返すことができる。しかし、サーブ側はサービスエイスを狙っているので、決して受け選手の手の届く範囲には打ってこないであろうと思われる。


              図4.手伸ばしの守備範囲

5.フォアハンド・バックハンド
 フォアハンド側かバックハンド側に来るかによって大きく違うことになる。


          図5.フォアハンド・バックハンドでの捕球での動作の違い

 図5は、サーブレシーブ動作において、相手打球がフォアハンド側かバックハンド側かで、守備動作がどう違うかを示したものである。静止構え方の守備では、一般的に何も気にしないでの相手サーブを待つ姿勢は右手でラケットを持ち構える方式である。
 相手打撃がフォアハンド側では球の来そうな位置へ瞬時にラケットを持っていくだけなのですぐできる。0.1秒後には捕球姿勢がとられる。
 バックハンド側の場合、球の来る方身体の反対側にラケットを移動させる必要がある。ラケットもある程度重さがあり移動量も結構あるので0.3秒はかかるであろう。このため捕球姿勢確保までの時間がフォアハンド側とバックハンド側では0.2秒の差があることになる。サーブ打球速が200㎞/時の場合、0.2秒差は球の移動距離にすると約10m強にもなる。球受けの余裕が大きく違うことになる。バックハンド側の捕球動作が、守備球受け弱点になってしまう。当然相手はそこを狙って撃ってくるのは目に見えてしまう。
 図3での捕球姿勢確保時間は平均値の0.2秒で描いたのだが、実際は図4のように違う動作である。球受けの余裕時間が0.2秒も違いことは、サーブ守備率に大きな差をつけてしまい、勝敗にも大きな影響があることになる。
 バックハンド側の弱点を克服するためには、ラケットを身体の中央部に持って、打撃面を相手方向にして胸のあたりにして構える姿勢を取るのが経験的に行われる。


           図6.フォアハンド・バックハンド両対応型構え

 図6.は、フォアハンド・バックハンド両対応型構えを示したものである。左側丸の中が、気にしない普通の構えであるが、右がラケットを胸の前に置く構えである。こうすると、フォアハンド・バックハンドのどちら側でも、動作開始から0.2秒で捕球姿勢がとれることになる。この構えはベテランやトップ選手では常識的なようで、左下の日本トップのN選手の国際試合での実際の映像である。ラケットを胸の前に置く構えである。図2での捕球姿勢確保時間を0,2秒としたのは(絵は構え方が違っているが)この構えを想定したものである。以下解説は、この姿勢での構えをしているという前提で進める。

6.サーブ打球速による守備範囲の変動
 表1は、相手のサーブ打球速度が120km/時、150km/時、180km/時、200km/時、230km/時の場合の各計算データである。①の表は受け手の守備選手の球追い移動速度がトップ選手なみの0.8m/秒、②は球追い速度が0.55m/秒の場合(市民選手)の計算である。②については相手のサーブ打球速度が160km/時を追加計算してある。

     表1.サーブ打球速による守備範囲の変動



 ①の表で、200km/時の場合、打球がダイレクトに相手に到達する時間は0.43秒、サーブエリアにワンバウウドさせるので、0.1秒程度を加算して、実際の到達時間を0.53秒と想定した。捕球体制を整え移動速度を確保できるまでに0.5秒かかるので、その後球が来るまでの時間が余裕時間となる。相手打球速が200㎞/時の場合は0.03秒しか余裕がないことになる。この時間内に球が来る位置まで移動できれば球を打ち返すことができる。サービスエイスにはならない。この時間内に0.8m/秒の速度で移動できる範囲が移動可能距離とした。守備範囲は、手伸ばし守備範囲2.7mと余裕時間に移動できる距離の幅との合計になる。相手サーブ球速が120km/時の時余裕時間が0.31秒あり、移動可能距離は±2.5mで手伸ばし守備範囲を加えて守備範囲は7.71mとなる。必要守備範囲を5mと想定するとカバー率は100%を越える。サーブ打球速が180km/時ならば、守備範囲は3.91mとなり、カバー率は78.1%となる。相手が上手に守備選手の構え位置から外してサーブすると22%もサービスエイスになってしまう。サーブ打球が200km/時を超えるとワンバウンド打球でも余裕時間が0.03秒しかなく、受け手はほんの少ししか移動できず、手伸ばし守備だけになってしまうので、守備範囲は3.15mとなってしまいカバー率は62.9%に落ちてしまう。相手のサービスエイスの確率は37.1%となり、3本に1本以上もやられてしまうことになる。
 230km/時の場合は受けてはまったく動けないことになる。相手は構え選手の手が届かないところにサーブを入れさえすればポイントが取れる楽な展開となる。こういった意味でサーブの攻撃性は大変強力なのである。
 ②の表では、相手打球が到達するまでの余裕時間に球追いで移動する量が小さくなる。そのため、サーブ打球が150㎞/時でも、必要守備範囲のカバー率が91.5%になってしまい、10%近い確率でサービスエイスになってしまう。180㎞/時では30%が200㎞/時では4割がサービスエイスとなる。相手にとって守備構えの位置からちょっと外したところへサーブを打つとポイントになる楽な展開になってしまう。

7.サーブ受け動作に対する「脳の訓練ルート」の開発!
 図3は、一連の動作と所要時間は訓練されたトップ選手の動作をスケッチしたものである。しかし、学生選手や市民選手などは剛速球サーブ受け動作を図のように短時間に円滑に行うことは一部の選手を除いて難しいであろうと思われる。習熟度が違うのである。特に150㎞/時を越すようなサーブやスパイクショット受けなどはかなり年期が入った選手でもなかなか上手にはできない。それは、前から解説しているように「脳の訓練ルート」が十分に出来上がっていないためである。 


             図7.サーブレシーブ動作
 
  勿論どんな選手でもサーブ守備(レシーブ)の訓練は行っているものと思う。しかし、しっかり「脳の訓練ルート」を開発するような訓練を行っているのであろうか。
図7は、図3の捕球動作の時間的経過を、相手打球の来る位置での動作の違い(フォアハンド側か、バックハンド側か)と時間経過を模式的に示したものである。当然であるが明らかに動作が違うのである。①の構えから⑤の打ち返しまで、トップ選手はこのような時間経過でなめらかに行っている。
 ②の動作開始した時点でバックハンド側に相手打球が来た場合、ラケットを持つ手の側の肩を回す動作が必要となる。フォアハンド側では必要ない。④の打ち返し時点でも、球を打つ手の振り回し方は反対方向で、力を入れる筋力は全く違う。相手の球を打ち返すことに対して全く違う動作をしているのである。当たり前だと思うかもしれないが実際の練習でそれぞれに対して「脳の訓練ルート」の開発をきちんと行っているだろうか。スポーツ共通の「身体運営システム」の項で解説したが、「脳の訓練ルート」の開発は一連の動作をきちんと一定状態で繰り返すことが必要である。野球の守備の項でも述べたが、ノック練習で右に打ったり左に打ったりするのを混在すると習熟に莫大な時間がかかる。習熟を早めるなら右側ノックなら同じノックを繰り返すことが大切だと解説した。条件を厳密に一定にするためにばらつきを排除するほうがいいということで、バッティングの項では±0.5cm打法訓練には、人為的な影響を避けるためトスバッティングを避けて、ティーバッティングのほうがいいと解説した。繰り返し回数は1日30回以上(できたら100回くらい)で1週間~30日位とも解説した。ある程度同じ条件で習熟したようになってきたら少しずつ条件を変えて習熟の幅を広げていく方法がいい。
 市民選手ではなかなか無理だと思うが、トップ選手をめざす選手の場合上に解説したように行っているのだろうか。サーブレシーブの繰り返し練習で、フォアかバックのどちらかに定めて一回30球以上を1週間以上続ける。トップ選手の戦いならサーブ球速は好きなくとも150㎞/時以上であろう。150㎞/時で繰り返し練習を行っているのだろうか。訓練時のサーブ打球の球打ちは誰がやるのだろうか。きっちり同じ条件で同じ側に打っているのだろうか。これについてはまたその3で解説する。

8.「動的反射能力」活用
 表1.①②のデータによると、相手サーブ打球速が150㎞/時では、守備側の余裕時間は0.17秒、200㎞/時ならば0.03秒しかない。打ち返しには本当に余裕がない。余裕がないので相手コートの思うところへ打ち込めない場合が多い。平凡な球を返して相手に打ち込まれることも多々ある。これに対して、神は人間に素晴らしい能力を与えてくれた。「動的反射能力」である。詳細は、スポーツ共通その2の「急発的動作開始2」で解説した。
 テニス守備2では、極めて重要なテニス守備への「動的反射能力」活用を解説する。