情報コード  DXY2
情報登録日  2019/07/10
情報作成者  河井正治

データベースの野球で解説したのは、ピッチング、バッティング、内野守備である。見所は他にも連携プレーや攻撃作戦など多数あるが、一応ここでは上の3点で考えてみる。

その2 バッティング

1.ヒットを打つ
 野球の攻撃的手段の代表はバッティングである。バッティングの目的は打って出塁することである。もちろん2塁打や3塁打、ホームランなど長打は得点の可能性が高く大変好ましい。打って出塁することを「ヒットを打つ」といい、安打と翻訳されている。2塁打・3塁打・ホームランなどは、飛距離の長いバッティンということでさらに様々なテクニックが考えられる。ヒットを打つにはアウトにならないため、打球を内野手に捕獲されないことが重要となる。

2.内野手の間を抜ける打球
 図1は、三遊間の一般的配置の模式図である。ベース間幅は27.43mと決められているので、一般的には内野手の担当する範囲は半分の13.7m位となる。

                  図1.三遊間の守備配置        
  
 図1のように、普通内野手は守備必要範囲13.7mの中央で構え、左右に守備移動して対応する。しかし、前に解説したように、いかに訓練ルートを研ぎ澄まして習熟しても、人間の運動能力的な制限のため守備可能な範囲が生じてしまい、その範囲を越えるような打球には対応できず抜かれてしまう。バッティングではここを狙うのである。
 内野守備の項で「構え待ち」状態での「急発的動作開始」では捕球姿勢確保までは0.5秒かかると解説した。バッターの打った打球はこの間内野手に迫って来る。内野手が捕球姿勢確保した後に球が到達するならば捕球されてしまう。しかし打球速が速くこの0.5秒間の内野手の捕球体制確保までの前に球が通過してしまえばクリーンヒットになる。つまり、打球速が速いと内野手の守備を抜けてしまう確率が高いのである。
 一般に高校野球での平均打球速度は90㎞/時、プロ野球で100㎞/時位と言われている。会心の当たりをした場合や昔のイチロー選手など打球の速い選手は120㎞/時にもなるという。

   表1.打球速と守備範囲との関係

 
 表1は、90㎞/時、100㎞/時、120㎞/時の場合を計算したものである。詳しくは内野守備その1を参照いただきたい。守備可能範囲から外れる打球は捕球できないのでヒットになってしまう。内野手の必要守備範囲から考えた守備のカバー率の項の右側に内野ゴロ打球のヒット確率を示した。打球速が90㎞/時の時は、内野手間を抜けるヒットの確率は7%にすぎない。間を抜けるヒットを打つのはその7%を狙うことになりなかなか難しいことになる。打球速が速いとヒットの確率が上がる。このことはバッティングの打率向上の重大なヒントになる。120㎞/時の打球では、内野守備選手の間を抜けてしまう確率が42%にもなる。一般に打率の高い大選手は打球速が速い。打率が高いということは、打球速が速いのが重要な要因の1つであるといえる。
 ヒットを狙うには、まず、内野手の間隙を狙うのであるが、速い打球というのもヒット率を上げる重要な要素となる。

3.ジャストミートを狙う。
 バッティングでは、ボールをバットの芯にきっちり当てて打つということが重要と言われている。ジャストミートと呼ばれる。速い打球速で打つためにはジャストミートは必須である。飛んできたボールがバッターの振ったバットに激突する。激突瞬間、バットの振られた勢いの力と投げられて飛んできたボールの勢いの力が激突した強力な衝撃力が発生する。その後、ボールは衝撃力によって得られた反発速度で飛翔することになる。飛翔速度(反発速度)は、衝撃力に反発係数をかけ合わせて計算される。反発係数はボールの組成や構造で異なるボール固有のもので、当然反発係数の大きなボールはよく飛ぶ。プロ野球や高校野球など連盟で主催される公式戦では、使う球の反発係数は規定で定められており公認球として厳重に管理されている。
 ボールとバットがズレて当たる場合打撃が行われると、バットの振られた勢いの力と投げられて飛んできたボールの勢いの力の激突でジャストミートと同じ大きさの衝撃力が発生するものと思われる。しかし、ズレ衝突の場合衝撃を受ける方向はバットとボールの2つの断面円の中心を結んだ方向(水平に対し傾いた方向)になる。結果的に倍の傾きにズレて飛んでいく。ちょっとのズレが方向的には倍に拡大されて飛んでいくのである。飛ぶ方向がズレると、打球速が急激に落ちる。計算の結果、ズレなしのジャストミートの場合の速度を基準として100%とすると、ズレが0.5cmの場合の水平方向打球速度はジャストミートの打球速の98%くらいになることがわかった。ズレが1cmになると打球速度は92.4%で、1割弱ほども遅くなり、快心の当たりでなくボテボテの内野ゴロと言われてしまう状況になる。
 さらに、プロ野球レベルの選手の速い打球と言われる打球速120㎞/時の場合のこのズレ量でのヒット確率を計算すると、ジャストミートの場合はヒット確率が42%にもなっている。ズレ量が0.5cmの場合ヒット確率は40%となりジャストミートとは大差がないようである。しかし、1.0cmではヒット確率が31%と1割以上も悪くなっている。
 そこでズレ0.5cmが、ジャストミート範囲内ということであると結論づけた。ジャストミートで打つと打球速が速くヒット確率が上がる。「快心の打撃」である。ズレ0.5cmは上下両方向あるので、「±0.5cm以内のズレでボールを打つこと」がバッティングの重要テクニックであることになった。「飛んでくる球に振るバットの高さを±0.5cm以内に合わせるという高度な技術を実施している強打者といわれる選手はやっぱり凄いのである。
 野球観察でスタンドから見ているのではこの打撃瞬間の±0.5㎝はとても見えない。
 実は、±0.5cmとやりやすくするためのバットの振り方がある。バットの振り方をみると、バッティングに関しての選手の成長段階がよくわかる。プロでもまるでレベルの低いケースが多い。

4.±0.5㎝を狙うバットの振り方
  直径6.3cmのバットを振り回して直径7.3cmのボールに±0.5cm以内に合わせて当てるというのは大変である。試合中バッティングは何度も回ってくる。その度にこの精度のいる作業を成功させなくてはならない。

         図2.打撃開始時の振り始めのバット位置      図3.バット上下変位の差

 図2は、打撃の際の構え姿勢からバットがボールに当たる打撃瞬間までの一連動作の模式図である。上段はバットを立てて構えそのまま打撃のための振りを開始する一般的な動作の一連である。下段はバットを肩より低い位置に寝かせた状態での振り開始状況である。ちょっと変則な構えに見える。図3はこの2つの動作におけるバットの変位の違いを表したものである。バットの長さはルールで106.7cm以内と定められている。打つボールはベルトの高さあたりに飛んでくるので、上段の方法ではバットのミートポイントがどう考えても振り動作中に1m以上高さの変異をすることになる。つまりバットを立てて構えると、バットのミートポイントは高い位置から打撃の高さまで1m以上も下降する軌跡になる。角度でみると30°以上斜めにボールをあてることになる。斜め衝突の場合、バットの振り速度の方向も下向きなので、打撃の速度を決める水平方向の成分も小さくなってしまう。図3を元に計算すると、まっすぐ当てるとジャストミートは±0.5cmであったのが、斜め上の方からボールに当てる場合±0.35cm相当にになってしまう。幅で7mmである。バットとボールの合わせがそれだけ難しくなる。試合中に剛速球でくる白球を7mm幅で打つのである。とても難しい。難しいと成功率は下がる。打撃のジャストミートの確率が大きく違ってくるのである。
 一方、寝かせ構えの下段の動作では、肩よりちょっと下からベルトの高さまではせいぜい数十cm以内となる。寝かせ振り開始ではそれはちょっとの下降ですむことになる。
しかも、バット振りの勢いも水平なのでロスもない。ボール打ちのバット寝かせ振りで、球に水平に当てるのが必須なのである 。

5.バットの寝かせ振り!
 たまたま放送のあった、今年(2018年)9月、残りも10試合を切ったプロ野球公式戦、そこまで2位のH球団と3位のF球団の順位をかけた白熱の戦いでの選手の打撃を見てみよう。

              図4.H球団 M選手のバット振り
    
 図4は、H球団の主力打者M選手の打撃時のバット振りの様子である。左側の上図がピッチャーのリリース瞬間までの構えでバットを立てた状態である。写真では見づらいので、中央部の写真には、補助線としてバットに相当数部分に赤線、右腕部分に黒線をつけた。右側の図はそこだけ取り出して表示したものである。構えでは立てたバットを、中段のようにボールが近づいて打つためのバット振り開始時には、バットを一時的に寝かせ状態にし、一気に打撃まで振りまわしている状況が読みとれる。
 野球観戦で注目して欲しいのは、図4の2段目の局面である。バットを打撃のために振り回す前である。殆どのプロ選手はバットを立てて構えていても、写真のように振り回す前に一度バットを寝かせてから振り動作を行う。これが±0.5㎝に当てる秘訣なのだと考える。

6.バット振り速度をさらに上げる
 ボールの打球速は、ピッチャーが投球した球速とバット振り速度の合計に比例する。投球速度は相手なので変えられないが、バット振り速度は打者自身で変えられる(上げられる)。
 ボールに激突する瞬間のバット振り速度を上げるには、バット振り回しの旋回速度を上げることで実現できる。「スポーツ共通その3(振り回し旋回技術)」の項で詳しく解説したが、「ヌンチャク振り回し」技術が重要となる。 図5の右上のように、ヌンチャクという武器は3~50cm程の金属製のバーを蝶番で2つ繋いだものである。敵を壊滅的に破壊するため、握りバーを持って振り下ろして、攻撃バーを激突させるように使う。握りバーをもって振り下ろすと、手を振っている最中は攻撃バーが握りバーに引きつられた状態で飛ぶように進む。振りの最終段階で握りバーは止まりかり、攻撃バーそのままの勢いで自身が急速旋回して相手に衝突する。攻撃バーは振り下ろしの速度に加えて、急旋回の大きな加速を受けて衝撃力を増して強力に激突する。単独バーでの打撃より旋回加速が加わって大きな衝撃力となる。強い攻撃破壊力が得られる武器なのである。図5のように、この強烈な激突力をバットとボールの激突に利用する。

              図5.バット振り回し旋回とヌンチャクとの原理 

 図5の左側は選手のバッティングの様子を真上から見たスケッチで、ボールは左から飛んでくる。左バッターの左手とバットの振り方をヌンチャクと同色系で描いたものである。バットを持つ手全体を表示すると込み入ってしまうので、左バッターの右手を主体に描いた。バット振りでボールが来る間近まで、手首回転によるバット振りは押さえて、肘で腕とバットを引きずるように(ヌンチャクの攻撃バーが最初は引きずられて移動)肘を前に出している。ボールが近づく瞬間に手首をひねりバット自身の回転を大きくして激しくボールに当たるようにして打撃する。これがヌンチャク振り回し技術である
 図6に、ヌンチャク打法とそうでない打法の比較を示した。
スティック図の、インパクト瞬間を⑤として、その3コマ前からの連続図で、頭(黒)、右手(茶)、左手(ピンク)、バット(朱)で表示した。
 左側の連続図(黒点線内)は、「ヌンチャク振り回し」打法のバットの運びを推定したものである。②から④の間のバットの振りは、振り始めた当初から④までバット先端は遅れてグリップだけが先行している。身体全体は旋回しているがバットはあまり旋回しないという状況である。インパクト直前の④から⑤の1コマの間に急激にバットが旋回してジャストミートするという振り方である。

            図6.「ヌンチャク振り回し」打法とそうでない場合との比較

 図6の右側の赤点線枠連続図は、普通のバット振り打法で身体とバットの旋回が一定速度で行われている状況である。インパクトの瞬間のバットの旋回は一定旋回速度でミートすることになる。最後に特段バットの回転が速くなることはない。打球の速さはボールに衝突するバット速度に比例するのでヌンチャク打法が断然優利となる。

7.バッティング技術の見所
バッティングの放送映像は視聴者を考えて前か正面からが多いのでバットの移動状況が厳密にはわかりにくいが、注意して観察するとわかるであろう。
 野球の攻撃は主としてバットでボールを打撃することである。その打球の速度と方向で成果が大きく展開する。重要なのは打球速が速いことである。プロ野球選手並みの打球速120㎞/時の速い打球は、内野ゴロでもヒット確率が42%になることがわかった。速い打球速を生むにはまずジャストミートすることである。ジャストミートするにはバットとボールのズレが±0.5㎝におさえなくてならないこともわかった。それにはバットの寝かせ振りが必須である。バッターの打撃の構えはバットを立てたほうがカッコウ良い。相手投手にも威圧感を与える。そのためプロの選手をはじめ多くのバッターがバットを立ててかまえる。しかし、プロの選手はほとんど寝かせ振りである。どうやってバットを立てた状態から寝かせ振りへと移行しているかよく観察して欲しい。寝かせ振りではない選手はまだ発展途上の選手であろう。
 ヌンチャク振り回し技術は他種目の球技での球を打つ局面では常識的に活用されている。ゴルフのクラブスイング、テニスのラケットスイング、ホッケーのスイング、バレーボールのアタック、等など。15年ほど前に、千葉のカントリークラブでのプロゴルファー養成講座でドライバー飛距離伸長を指導したことがあった。10人の養成選手で、平均飛距離260ヤード(最高でも280ヤード)であったが、ヌンチャク打法訓練で全員が300ヤードを越した結果になったことを記憶している。今や球技での打撃局面では「ヌンチャク振り回し」技術が常識になっている。野球での「ヌンチャク振り回し」技術の状況をよく観察して欲しい。